ラテンアメリカ民話集(岩波文庫)読了!

こんばんは!

 

ラテンアメリカ民話集」という、

ラテンアメリカの民話とその解説が収録された本を読み終わりました。

本書を読み、海外の文化に触れられて非常に興味深かったです。

以下、掘り下げて感想などをまとめていきます。

 

 

本書との出会い

 この本を初めて見かけたのはツイッター上でのことでした。

何かのアカウントから流れてきた紹介を見て、

外国の民話、昔話とはどんなものだろうかと本書を手に取りました。

 外国の事件やニュースに触れやすくなった昨今、

子どもに聞かせるような昔話という形で触れる異国情緒に興味を引かれたのです。

 

本書の構成

 本書は、4つの分野に分けられる37の民話とそれぞれの解説で構成されています。

4つの分野と民話の収録数は以下の通りです。

  1. 動物譚   5話
  2. 本格民話 18話
  3. 笑話   11話
  4. 形式譚   3話

1つの民話を長くとも数ページ程で非常に読みやすかったです。

 解説の内容は、民話の特徴・起源・伝播の仕方、類似の民話が多かったです。

一読しただけでは意味が分からない民話も僅かにありますが、

解説のおかげで意味が全く分からないということはないと思います。

 

感想

 本書を読み終えて、当初期待していた通り充分に異国情緒に触れられました。

日本にも伝わる昔話と類似する民話も収録されていましたが、

類似する民話の中でも大きく異なる点が見受けられると面白いですね。

 また、登場人物として聖人や死神が選択されている点も驚きました。

日本と異なる宗教的価値観が民話に色濃く民話に反映されていました。

 収録されている民話の中からいくつかピックアップします。

動物譚

「シカと海ガメ」

 キューバの民話ですが、大まかには「ウサギとカメ」と同じ流れです。

足の速いウサギ役がシカ、足の遅いカメ役が海ガメだったのですが、

レースに勝利する要因が大きく異なります。

 

 カメは休まず走り続けることで怠けたウサギに勝利しました。

ところが、海ガメはシカを騙すことでシカに勝利しています。

勝利する要因の違いに注目するのは穿ちすぎでしょうか?

 

 民話の流れのなかでシカの生態に言及したり、

歌のようなフレーズが挿入されている部分がありました。

シカ猟のための教育であったり、言葉を覚えるための工夫だったりするのでしょうか?

根拠はありませんが笑

本格民話

「歌う袋」

 ブラジルの民話です。悪人が袋を使って少女を誘拐し金儲けをしますが、

最後には少女の親によって悪人が罰を受けるという話です。

 

 解説によれば、悪人による誘拐の原点が

食人種による誘拐というのだからゾッとしました。

異文化の恐ろしい部分に触れた気になりましたが、

最後には勧善懲悪、悪人が成敗されたので一安心です。

「死神の名付け親」

 ドミニカ共和国の民話ですが、欧米に広く類似の民話が存在するようです。

貧乏な男が自分の子どもへの名付けを死神に依頼します。

子どもはやがて医者として成功しますが、最後には命を落としてしまいます。

 

 名付け、つまり洗礼を大きく取り上げた民話である点が面白かったです。

貧乏な男は死神に洗礼を頼む前に、イエス・キリストに洗礼を断られています。

イエス・キリストが登場することにも、

イエス・キリストが洗礼を断ることにも可笑しさを感じました。

反宗教的なニュアンスが含まれているのでしょうか?

 

 この民話は古典落語に「死神」という演目として存在します。

千原ジュニアさんや鶴瓶さんも演じられたことがあるようで、

ぜひ聞いてみたくなりました。

笑話

ジョアン・グルメテ」

 ブラジルの民話です。

主人公の靴屋が王様の無理難題を解決していくというのがあらすじです。

解決の方法や無理難題が面白かったです。

 

 当時、靴屋や仕立て屋などの手工業者は不誠実だとみなされていたようです。

定住し続ける農民に対して、手工業者は仕事を求めて町々を流浪するためだそうです。

しかし、町々を流浪する手工業者こそが民話の伝播を担っていたというのは

なかなかの皮肉だと思いました。

形式譚

「十二の数え歌」

 チリの民話です。黒人奴隷が悪魔の力を借りて、主人の娘と結婚します。やがて悪魔が力を貸した代償として黒人奴隷の命を取り立てに現れますが、十二の数え歌の奇跡によって悪魔を退けました。

 

 まず、形式譚とは何かと疑問に思いました。語る形式の面白さが話の根幹となっているものを形式譚と称するようです。本話であれば、数え歌が形式的になっています。

 

 奴隷と主人の娘の禁じられた恋が話の根幹になっている点は、

やはり人類共通で恋愛話はウケるのだと面白かったです。

不思議な力で願いを叶えたり、悪いものを退けたりする話は聞き覚えがありますが、

露骨に宗教的な表現は外国の文化が感じられてよかったです。

まとめ

 最初は民話に触れることだけを期待して買った本書でした。

しかし、それぞれの民話に対する掘り下げがあり、

民話研究の知識にも触れることができました。

結果として、単純に海外のお話に触れるだけでなく、知識を深められました。

 内容が読みやすいこともあり、大変な良書だと私は思います。